追憶のネズミ

  • 2017/1/17
ネズミのチューキチ

あれはまだ私が小学校低学年の頃だったと思いますが、一度だけ家にネズミが住み着いたことがありました。

あの時は確か夜寝ているとコトコトコトコト‥と変な音がなったり、階段のところにコロコロっとしたフンが落ちていたりして、姿は見えないけれども確実に何かが潜んでいる感覚というのかな‥

それがネズミの仕業だと判明したのは父親が仕掛けた罠にかかっている大きなドブネズミを発見した時でして、

トリモチに身体をとられもがいている姿を見たときは正直怖かったのを子供心ながらに記憶しています。決して“トムとジェリー”等のアニメに出てくるような可愛らしい姿ではないというのが素直な感想でとにかく怖かった。

しかしまあその後、家を引っ越したりして結局ネズミの姿を自分の目で見たのは子供時代に経験したその一回だけで本物のネズミは何だか苦手だという意識だけが私に残りました。

その後はテレビでたまに見かけるか、理科の教科書に出てくる様な実験用の白いハツカネズミを写真越しに見る程度の日々。

そして三十年あまりの月日が流れ、

まだ寒くなる前の話ですが、きらびやかな地方都市の地下街でふと小さな影を目にします。いや、意外に大きな影でしたね‥

それがネズミだと気付くには時間はかかりませんでした。薄汚れていて尻尾が妙に長くて、普段見馴れていないだけにギョッとしたのを記憶しています。

私が見たのはやはりちょっと大きめのドブネズミでした。

30数年振りに御目にかかるその姿に以前の恐怖とは裏腹に珍しいなと思い、しばらくの間じっと観察していましたが、これまたやはりどうにもおぞましいなという気持ちにぶち当たりその場をあとにしました。

ここで記憶は過去に遡ります。

父の昔話をふと思い出すことがあって、父が子供の時代は家にネズミがいるのが当然で寝ている時なんかによく枕元にやって来たというのです。

“あんな気持ち悪いものが枕元にいてどうだったの?”と訊くと驚くことに父は、

「いや、実はあいつらは可愛いんだ」

と子供の私に答えるのでした。

父曰く「よくよくじっと見るとネズミもゴキブリもみな可愛い」のだそうです。

独自の感性を子供に伝える父でしたが、しばらくしてそれは別段特別な感性ではないことに気付かされます。

試しに“昔はよくネズミがいて身近な存在だったそうだ”という話をネットで話してみたところ、不意に男前のおっちゃんからこんな画像とメッセージが届きました。

ネズミのチューキチ

ネズミのチューキチ

 

“何年か前の真冬にチョロチョロしてたのを捕まえて春まで養ってやったチューキチです。可愛かったですよ”

 

衝撃でした。

退治するどころか、春まで養ったというのです。可愛い姿まで写真におさめてるし‥何年か前ということは結構最近ですよね?

まあ確かにこれなら可愛い‥か‥

本物のネズミといえば、残飯漁ってたりしてダーティなイメージなんだけどなとネットの画面越しに感じている途中‥

ふと感じる心の中の違和感

沸き上がる仄かな気持ち

ネズミのダーティな部分は前提としてですが

“そのコミカルな動きやそのつぶらな瞳は本来可愛いものなのだな”という突飛な肯定感と高揚感、

今までの感性がスッと塗り替えられていくのを感じます、そして次の瞬間にはそっと指を動かしている自分がそこにいました。

父が言ってた“いや、実はあいつらは可愛いんだ”というセリフが急に肚に落ちたのです。

信じられないことにそのまま私はチューキチの画像を保存するのでした。なんたることか

 

仲 高宏「na工房」の管理人

投稿者プロフィール

主に日曜大工(diy)やハンドメイドに関するお役立ち情報を発信しています。
電動工具の扱いや、木材の加工方法、便利な補助道具の紹介を記事にしています。
最近は「木彫り」や「切り絵」も始めました。

この著者の最新の記事

リンク

スポンサーリンク

おすすめ記事1(技術系)

  1. イヤーマフ
    電動工具の騒音について日曜大工(DIY)好きの皆さまはどのように対策されていますか?今回は電動工具の…
  2. 丸鋸画像
    今回は丸のこの紹介です。丸のこは取り扱いさえ間違えなければ、スピーディーで綺麗な直線切りができる頼も…
  3. 花粉症用の眼鏡
    丸のこでちょっと木材を切ったりするぐらいならどうってことありませんが、電動トリマーで切削したり、電動…
  4. トラックの荷台で荷物をロープで強く縛りたい時、またアウトドアで木に張力(テンション)をつけてロープを…
  5. ラブリコで柱をたてる
    家の中で縦の空間を有効活用したいというのは皆がよく思うことだと思いますが、例えば天井一杯に棚を取り付…
  6. 机と椅子(人形用)
    娘の5歳の誕生日にあわせてドールハウスを作った。 妻がリカちゃん人形をバースデープレゼントに購…
  7. 今日は石粉粘土(ねんど)の紹介です。 今まで特に使用していなかったのですが、これが使い始めると…
  8. ベビーゲート
    今回はベビーゲートの紹介です。子供が1歳を迎える頃には用意しておいて損はない便利な商品です。メーカー…

スポンサーリンク

おすすめ記事2(アートワーク系)

  1. 今回は“白木のキット(市販品)”を用いたマトリョーシカの作り方を紹介したいと思います。自分だけのオリ…
  2. ウェルカムドール
    この度めでたいことに妹が結婚する運びとなり、na工房としてはウェルカムドールを自作して提供することに…
  3. アイロン接着フェルトを切抜き、ワンポイント作り
    無地の生地に何かしらの目印、ワンポイント的な何かを付けたいなという時に便利だなと思うものに、“アイロ…
  4. 今回は木彫りの手順を紹介します。前回は部分的に木を面取する方法を紹介しましたが、木彫りというのはそれ…
  5. フクロウさん完成(木彫り)
    今回は木彫り彫刻でフクロウさんを彫る手順を紹介致します。以前絵本に出てくるコミカルなタッチのフクロウ…
  6. ちょっとだけまいごのチビフクロウ(木彫り)
    クリス・ホートン氏が手掛ける不思議な色合いの絵本「ちょっとだけまいご」をご存知ですか? 木から…
  7. フクロウ(羊毛フェルト)完成
    普段は木工ばかり手掛けているna工房ですが、今回は初めて繊維に取り組みます。羊毛フェルト(フェルティ…
  8. プラバンで作った“ピーターラビット”と“お茶”
    3歳の娘が「“プラバン”作って」とこちらに寄ってきました。プラバンって何だったかななんて記憶の糸を辿…

リンク

リンク

back number 50

ページ上部へ戻る