「フランダースの犬」解説―風車が燃えた秘密ってどんな本なの?

  • 2017/3/26

今回は本のご紹介です。

“「フランダースの犬」解説―風車が燃えた秘密―”

これは門松一里先生の著書で、

題名の通りこの本は名作フランダースの犬の解説本ですので、私のような第三者が更にこれを紹介・解説するということは、本当はちょっと回りくどいわけです。

この時点でお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、本来は野暮の極みなんですよね。

ではなぜわざわざそんな野暮なことをするのと聞かれれば、渋々ながら「なんや分からんけど書きたかってん‥」と関西弁でお答え致します。

もっと突っ込んで照れ隠し的な表現を外すのであれば、野暮ったくても皆に知って欲しい、且つ読んで欲しいという気持ちの現れなのです。

‥‥

話は飛びます

私はカクテルグラスだと思っているのですが、もし間違っていたならすみません

門松一里先生のアイコン

門松一里先生のアイコン

独特のラインで描かれたカクテルグラス、斜めの線はバーカウンターで、グラスが静かに置かれているといったイメージでしょうか。

これは著者である門松一里先生のツイッター上でのアイコンですが、ずいぶん記号的な印象が強いアイコンですよね。

初めて見たときからその様に感じておりまして何だかんだでほぼ一年が経ちます。

本を出されていることは知っていましたが、どちらかというとSNS上での発言が面白くてしばらく楽しんでいました。

先生から発せられるツイートは私の心を時折こちょこちょとくすぐってきました。時に哲学的で、時に暗号めいた言葉に「なんだろな?」と一瞬立ち止まる私、

例えば2016年5月18日のツイートは大阪日本橋の電気街の光景と共に流れてきました

「Veni,vidi,vici」

ん?!‥何だろう

英語ではないけれどもなんだか見覚えのあるような言葉のならび、日本語のタイムラインの流れの中でふと混じる異国の言葉、記憶を呼び覚ます‥

ああ世界史の授業で習ったあれかな?ネットで検索してみる。

カエサル率いるローマ軍がたったの四時間で戦闘に勝利したときに、カエサルが腹心に送ったとされる手紙の一文「Veni,vidi,vici(来た、見た、勝った)」

これだ

そういえば電気街の写真って喜多商店が写ってたよな‥

喜多商店

喜多商店(2013年に閉店)

大阪ではお馴染みだった「来た、見た、買うた(買った)」がキャッチコピーだった家電のお店、喜多商店‥

テレビCMもよく流れていました。関西弁のイントネーションで「来たー、見たー、買うたー」とコピーがおどる。

「Veni,vidi,vici(来た、見た、勝った)」

何てことはない喜多商店を見たからそのキャッチコピーを思い出して、その原点であるカエサルの言葉をツイートしていたのである、単なる独り言なのであります。気付いた瞬間にズルっとずっこけたのは言うまでもありません。

しかしローカル色の強い話で申し訳ないですが、大阪日本橋の電気街も昔ほどの元気がない。実は喜多商店も看板だけが残っているだけで店はたたんでしまっているのです。その後は中国から来た観光客向けの店に様変わりしてしまっています。

もしかしたらツイートの裏の本心では「来た、見た、その様変わりしてしまったかつての電器店を」という気持ちだったのかも知れないなと思うと少し切ない気持ちにもなるのです。

この感情はその土地に行ってそこの空気を吸わなければ分からないものかもしれません。

その土地、その時代背景と流れを知らなければ、そこで暮らし生活する人の気持ちを推し測ることはできませんよね。

重要なことです。

「過渡期をどう生きるか」という問いかけなのかもしれない、見方によってはそうとも受け取ることもできるツイートでした。

「過渡期をどう生きるか」

キーワードです。

‥‥

ネロとパトラッシュ

ネロとパトラッシュ

‥‥

さて、前置きが長くなりましたが、今回は門松一里先生の著書“「フランダースの犬」解説―風車が燃えた秘密―”を取り上げてみます。

これ実はすごい本なんです。あの名作フランダースの犬を当時のベルギーの時代背景から考察して解説してくれるというもの、こう聞くだけでちょっと心がわくわくしてきますよね。

しかしですね、本筋の裏を読み解くと単なる解説書ではないことに気付くんですね、これをいかにネタバレさせずに伝えることが出来るか、今回の課題です。これは大いなる挑戦で、その為に前置きが長くなってしまったのです。

そんなこんなで

照れながらも「なんや分からんけど書きたかってん‥」

となったのです。

門松先生の人柄がかいま見えないともしかしたらこの本はずっと解らず仕舞いになってしまう可能性がありますからまずは先生の紹介から入らなければならないのです。

端々において暗号的な要素が多い謎めいた人で、クロスワードパズルが人になるとこんな人になるんじゃないかと私なんかは勝手に想像しています。お会いしたことはありませんが‥すみません

‥‥

本文はベルギーという国を紹介するさわりから始り、フランダースの犬の舞台を文化的側面と時代背景から紐解くことから進んでいきます。

まずは日本のアニメ版と原作との対比(違い)を箇条書き形式で詳しく解説してくれます。書いちゃうとネタバレになってしまうので割愛しますが、箇条書きなのでそれは地味で断片的です、しかしこの箇条書きが伏線となって後々効いてきますのでボクシングで云うところのボディブローになります。

原典をあたることは門松先生の基本姿勢なのです。

そして原作のあらすじを日本語で紹介して下さるのですが、これが良いのです。名作をそのまま読むことの喜びを感じることひとしお、やはり最後は涙なしでは語れない結末に「これでいい、これ以上の解説は蛇足になるのではなかろうか」と一瞬そのまま本を閉じそうになったのですが、いずれその考えは浅はかであったことに気付かされます。

ただ、そこまでいくには様々な角度での切り口から語られたそのあとに続く膨大な量の文章を読み進めないと辿り着けないのですが、ぜひ“「フランダースの犬」解説―風車が燃えた秘密―”を最後まで読んでみて下さい、できれば二回繰り返して読むことをお薦めします。

なぜ浅はかだったと私が感じた理由が分かっていただけると思います。

アントワープの大聖堂

アントワープの大聖堂

ここでちょっと休憩、フランダースの犬のエンディングの舞台になるアントワープの聖母大聖堂とはこんなところの様です、天井までの高さが美しい荘厳な作りです。少年ネロが最期にパトラッシュを抱き締めた舞台、日本のアニメではパトラッシュと共に天使と一緒に天に召されるシーンがあまりにも有名です。

‥‥

さてと

原作のあらすじが終わりますと、驚くべきことですが、急に門松先生の作家としてでなく、経営者としての表情(側面)がにょっきり顔を出します。

なんとフランダースの犬に出てくる登場人物を客観的に各項目ごとに評価しだすのです。

これがこの本の醍醐味なのですが、登場人物の解説ではなくどちらかというと人事的な評価なのです。

この評価が結構辛辣で悲劇の少年ネロは原作とはまた違う厳しい仕打ちを受けます。

サラリーマンである私なんかの脳裏には社長面談の残像が頭をかすめ、気持ちちょっと吐きそうになりました。

五段階評価で星一つとかほんまにやめたって下さい、先生。

‥‥

さて、この人事評価的な解説がくせ者なのです。

よくよく考えると物語の解説書には登場人物の人事評価は普通加えないモノなのです。

何故なら物語の中の人は物語の中で完結しますので、人間的に問題があろうがミスが多かろうが関係ないのです。“この人物はこういう性格のもとこういう行動を起こしたのだ”と分析すること。これが本来の筋です。

ところが門松先生は違います、ネロを無能という評価で軽くあしらったあげく、その上で助言するのです。「ネロよ、あなたは甘かった」と‥

“何が甘かったか?”

全てにでした。第二次産業革命の時代に未来を見据える力、画家を目指すための努力‥

ネタバレ必至で云いますと、この経営者としての視点で物語を読み進めないと、フランダースの犬は読み解けないのです。

副題―風車が燃えた秘密―の秘密の部分がここにあります。核心は本書で確認してください。

さあもう一つ本書の核心に迫る話をします。これに関してはネタバレではないので話しても良いでしょう。

読み進める途中で読者であるあなたは気付くはずです。本書は読みといた結果を分析・解説しているだけではなく、同時にあらゆる物事の読み解き方や、時代を生き抜く術を解説しているという事実に‥

  • 第二次産業革命時のベルギーと他国の関係、並びに風車を使った粉挽という産業
  • 地政学的立場からのベルギー
  • 民族・言語からの切り口で見るベルギー

他にも様々な切り口で“フランダースの犬”を分析し、解説に到るまでのプロセスが記されています。

重要です、プロセス(手順)を書いています。

はい、本書は最終的には物語を解説するという枠から外れて、指南書としての側面が強くなるのです。むしろ解説書の皮を被った指南書といっても良いかもしれません。

そして、それは同時に読者であるあなたが悲劇の少年であるネロと同じ道を辿らないように、「過渡期をどう生きるか自分の頭で考えよ」と問い掛けられているように私には感じました。

‥‥

ぜひとも読んでみてください

ブログに来てくれてありがとうございます、面白かったですか、また来て下さいね

仲 高宏「na工房」の管理人

投稿者プロフィール

主に日曜大工(diy)やハンドメイドに関するお役立ち情報を発信しています。
電動工具の扱いや、木材の加工方法、便利な補助道具の紹介を記事にしています。
最近は「木彫り」や「切り絵」も始めました。

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